前回の四季報記事で特に我が社が注目!とした企業に「手間いらず」という企業があります。
昨日当社のポートフォリオに急遽加えたわけですが、その根拠についてこの記事で説明したいと思います。今後のシリーズかも見据えて「シリーズ企業分析」としています。
長い記事が読みたくない人はざっくり概要を
・比較サイトから宿泊施設向けサービス提供に業態転換して復活
・利益率すごい、成長率高い、財務も安定的
・今後も成長の余地あり、ライバルとの優位性もある
・(結論)手間いらずは買い
手間いらずとは?
この一風変わった企業名「手間いらず」の由来となったのはホテル・旅館向け「宿泊予約サイトコントローラ―」の製品名です。2017年10月に旧社名「比較.com」から変更されています。
宿泊予約サイトコントローラ―とは
皆さんも旅行や出張で宿泊予約サイト(じゃらん、るるぶ…)を利用したことがあると思いますが、これらサイトの掲載内容を自動で管理するのが「サイトコントローラー」です。
施設側はwebからの予約を多く取りたいので、いくつもの予約サイトに空室の「在庫」を登録しています。
もしサイトコントローラ―がないと、あるサイト用に用意した部屋が満室になったら、別のサイトの「在庫」になっている空き部屋を回す・・・という作業を全部施設側で行わなければなりません。
手間いらずはこれらを自動化するサイトコントローラーを開発し、全国の宿泊施設に売りこんでいるのです。最近では宿泊需要の予測機能が追加されるアップグレードが行われています。
手間いらずの歴史
株式会社手間いらずは、2003年に設立され、06年にマザーズ上場をはたしています。
当時の社名は「比較.com」といい、価格.comのような価格比較サイトを運営する会社でした。当初は順調に成長し、10年には売上高10億を超えましたが、11年以降は売上が低下、これ以降は「比較.com」などの不採算事業を縮小・撤退し、現在の社名にもなっている「手間いらず」に注力しています。
手間いらずの現状は?
手間いらずの直近期(2018.6月期)の業績は、売上高11.1億円に対し純利益4.6億円。売り上げの半分近くが純利益ということで、「儲かりやすい」企業といえます。
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前期との比較でみても、売上高の伸びが20%↑、利益の伸びは40%↑と急速な成長が見られ、8年前(10.6月期)に記録した同社の過去最高の売上、利益を超えることができました。
また、財務的にも安定していて自己資本比率は9割以上、固定債務なしという無借金経営。ネットキャッシュは28億円あり、十分な余裕があります。
手間いらずの今後は?
四季報2018・秋号に掲載されている同社の今後の業績予想は以下の通りになっています。
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次期以降も順調な成長が予想されています。また、17年からはAirBnbと連携し、25室以下の小規模宿泊施設でも手間いらずを導入するところが増えています。
また、先日行われた株主総会の議事録をYahoo!ファイナンスの掲示板に書きこんだ方がいらっしゃるので、今後の会社の方向性がわかる質疑を抜粋します。(読みにくい点は一部こちらで修正したり、強調したりしています。)
Q.以前の総会では、宿泊業者6万で「手間いらず」の対象事業者が1割の6千、うち3千は確保したとの話だった。民泊事業者が増えた現在の数字はどうか。
A.正確な数字は公表してないが、取引先には契約施設数は約4千と話している。OTA(オンライントラベルエージェント)最大の楽天トラベルの登録施設約3万のうち、サイトコントローラをまだ導入していない残り1万5千が対象。
また、新しいホテルの建設やリノベーションによる不動産のホテル活用も活発。民泊市場は規制が厳しいが、簡易宿泊施設の建設ラッシュが起きている。感触では年間1千から2千増えており、今後10年位はこれが続いて2万-3万施設が対象になると考える。
現状が4,000施設で、現状で残りとれるパイが15,000、今後10年でそれが最大30,000まで増えるということは、まだまだ成長の余地ありとみてよいでしょう。
また、サイトコントローラ―の首位は、楽天傘下の企業が開発している「ねっぱん」で、施設数だけで見ると8,000を越え、手間いらずの倍の施設で導入されているわけですが、これについては手間いらず側はこのようにコメントしています。
Q.どのホテルにも認知されているとの話だが、それで使われないなら不満があるか競合サービスが魅力的ということ。首位は楽天だが劣勢を挽回する施策はあるのか。
A.楽天グループ子会社とリクルートグループ子会社と当社との三者のプレーヤーがいるが、当社が劣勢というのは誤認識。楽天のサイトコントローラは楽天トラベルの参加施設が無料で使えるもので、作り込みがあまく都心で殆ど使われてない。地方の家族経営のペンションや離島の民宿など「手間いらず」をつかう必要がないところが使っている。
楽天の公表では利用施設は7千(現時点では8千越え)だが、優劣は数ではない。当社の対象は沢山のチャネルをつかう経営基盤のしっかりした施設。
機能性からみて、劣るものではないという認識のようです。また、会社規模の拡大を考える際、最も手っ取り早いのは、同業他社を買収してしまうことですが、これについても質疑の中で「まだそこまでの資金力はない」として否定しています。
この会社はかつてバイオや美容などのよくわからない会社を買収しては、シナジーが効かず撤退している過去もありますから、あまりM&Aはやってほしくないなあというのが素直な印象です。
手間いらずの株価は?
ここまで会社の過去、現在、未来と見てきましたが、結局は株価に上昇の余地があるかどうかです。手間いらずの長期チャートを見てみましょう。
業績が回復し始めた13年以降急速に上昇しています。特に17年後半は一時4,000円を超え、最低値の160円(12年1月)から見れば20倍以上となり、ダブルテンバガーです。
9月末現在はやや落ち着き、3000円前後となっています。PERが40倍と高いので、下落を待って買っても良かったのですが、気になったらすぐ買ってしまう性分から待てませんでしたw
春以降マザーズ全体として不調だったものの、このところは戻しており、良い買い場を逃したと思います。もし下がれば、資金の許す範囲で買い増しできればと考えています。
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