昨日アップした前編では、2019年のIPO企業90社の中から、売上高や営業利益率、株主構成などでスクリーニングした12社+9社を「テンバガー候補生」として紹介しましたが、今回はその後編として、さらに企業を絞り込んでいきます。
今後も強い成長が見込めるのは?
前回記事のおさらいをしておくと、
- 前々期⇒前期売上高成長率20%以上(※4年間続けるとほぼ売上高が2倍になる)
- 営業利益率10%以上
- 上場5年以内(2019年上場の銘柄だけに絞るのでこの条件は関係なし)
- オーナー経営者がいる(筆頭株主=社長本人かその管理会社)
という条件で12社+9社(営業利益率がちょっと足りない5~10%未満)をピックアップしました。
今回はさらに、「今期以降の業績予想」も条件に加えてさらにスクリーニングしていきます。その結果は以下の通りです。今期予想される売上高の成長率が鈍化する7066 ピアズ他6社が脱落となりました。(成長率19.9%だからほぼ合格みたいなもんですが、絞り切れないので・・・)
それではこの中から特に気になった4社をピックアップしたいと思います。
4431 スマレジ(設立2005年、上場2019年2月)
事業内容
複数店を展開する中規模店舗(小売、飲食)にクラウド型のPOSシステムを提供する企業です。元々は受託開発専門の会社だったのですが、現在のスマレジを提供する部門がスピンオフする形で、現在のスマレジ社の前身が設立されています。
通常POSシステムというと、コンビニやスーパーで利用されるシステムというイメージがありますが、こうしたシステムを中小規模の店舗にも手軽に導入できるようにというのが同社の狙いです。また、各種会計システムとの連携も可能で、決算や確定申告にもデータを利用できます。
料金は業種や規模に応じて定額となっており、いわゆるサブスクビジネスといえるでしょう。
業績
2019年4月期の決算は売上高19.7億円(前年比41.8%増)、営業利益4.3億円(前年比280%増)となっています。今期(20.4月期)も大きな成長が予想されています。来期の成長予想がちょっと物足りない感じもしますが、20%以上の成長率が予想されているので、十分な水準でしょう。
株価
上場以来の株価推移を見てみると、上場してから約半年間は下げ続けでした。これはまあ「IPO銘柄あるある」の範囲といえるでしょう。その後、好決算を重ね、またスマレジの累積取扱高が2兆円に達する等、着実に実績を上げていることが評価され、11月の最安値からわずか1月で1.5倍の急回復となりました。
まだ上場来最高値までは戻せていませんが、その水準を超えられれば、更なる上昇も見えてくるでしょう。
参考資料・サイト
2020年4月期 第2四半期決算説明資料
成長可能性に関する説明資料
総評
同社がターゲットとする中規模の店舗は日本に約77万店。そのうち約8万店がこのスマレジを利用しており、さらに有料機能の利用店はそのうち2割の約1万5千店と、まだまだ拡大余地があるといえるでしょう。
ただ、クラウド上で動くPOSレジシステムは同業他社も展開しており、例えばリクルート系の企業が運営する「エアレジ」はなんと全国45万店で使用されており、スマレジとは異なり完全無料です。(※端末代や周辺機器代は除く)
スマレジはエアレジよりも多機能な分だけ一部有料という形をとっています。1店舗だけの展開ならエアレジ、複数店を展開するお店はスマレジの有料プランを使うという形で、住み分けは可能だと思います。
なお現時点での同社時価総額は327億円ともう既に小型株の域を超えつつありますが、さらなる飛躍は十分期待できると思います。
7068 フィードフォース(設立2006年、上場2019年7月)
事業内容
フィードフォースはデータフィードに関する事業を行う会社です。データフィードとは、インターネット上で、広告主等から商品データなどを広告媒体等へ定期的に送受信する仕組みのことです。
広告主が作成した商品データを、Google検索やYahoo!広告、求人サイトなどに一括で流せるサービスや、広告データの最適化を行うサービス、そしてLINEやFacebookなど各種IDと連携させて自社サイトへログインさせるID連携サービスなど、幅広く行っています。
業績
2019年5月期の決算は売上高7億円(前年比24.5%増)、営業利益0.4億円(黒字転換)となっています。今期、来期ともに大きな成長が予測されます。
株価
フィードフォースの株価は、やはり上場直後は下げ続け、11月までは全くいいところなしでしたが、全体の市況回復に伴って値を戻しています。
年明けて1月10日に、今期第2四半期の決算発表が予定されていますから、この決算が重要なポイントとなりそうです。
参考資料・サイト
2020年5月期第1四半期決算説明資料
成長可能性に関する説明資料
総評
広告主からデータをもらって、これをGoogle等に流す仕組みを作る・・・みたいなデータ流す系の企業は結構多い(求人サイトのデータを取って、比較するじげんとか)です。
実際ちょっと「データフィード事業」で検索しただけでも、Innovation Agencyオプト、リブセンスなどライバルが多そうです。
また、同社はたくさんのサービスを展開していますが、いったん始めたサービスはなかなか止められないものだと思います。展開するサービスの取捨選択はできているのか、撤退できるのかが気になります。
なお、フィードフォースの時価総額は109億円とまだ小さく、成長の余地は十分にあると思いますが、今期予想業績から見たPERは68倍と割高で、業績が株価に追いつくのを待ってからでも遅くないかもしれません。
4482 ウィルズ(設立2004年、上場2019年12月)→成長鈍化により注目企業から除外
(2/15:追記)ウィルズは成長鈍化予想により注目企業から除外
2/14 発表の通期決算で示された’20年12月期の業績見通しによれば、売上高の成長率が約13%とかなり鈍化しそうなので、注目企業から除外とします・・・。
どうしたウィルズにエードット・・・期待の2社ともダメ決算 https://t.co/ZgYfPbjfoq pic.twitter.com/TgfMCXePmc
— 裏日本ホードリングス公式アカウント (@torao_bannai) February 15, 2020
事業内容
ウィルズは、企業と投資家(個人・機関)との関係性を最適化することに特化した企業です。
我々が株を買うと、「議決権行使」の案内や、「株主優待」としてその会社の商品やサービスの優待券や割引券が送られてきます。
しかし、議決権行使を郵送しようと思っている内に行使期間がすぎ、株主優待券も近くにその企業の店がなく使えないなど、使い勝手には大いに問題があります。
ウィルズではこうした問題を解決すべく、議決権をネット上で行使したり、優待をポイント化して使えるようにしたりできるなどの株主向けサービスの電子化に取り組んでいます。
また、企業に対しては、誰が株式を持っているのかという株主名簿の管理、より投資家から魅力的に見えるようなIR情報の整備などのサービスを提供しています。
業績
2018年12月期の決算は売上高11.6億円(前年比78.3%増)、営業利益1.1億円(前年比203.7%増)となっています。直近期決算では営業利益率が10%に少し届きませんが、今期(2019年12月期)の業績予想では営業利益率が16.9%と採算が大きく改善しています。
株価
ウィルズは12月に上場したばかりなので、これといった値動きはないのですが、やはり上場直後の下落する流れに入っています。12/30の大納会は全体の好市況を尻目に初値割れと、少々寂しい結果で昨年の取引を終えています。確かに現状のPERは100倍近くと、かなり割高水準ではあるのですが・・・。
参考資料・サイト
成⻑可能性に関する説明資料
東京証券取引所マザーズへの上場に伴う当社決算情報等のお知らせ
総評
ウィルズはいわゆるIR(投資家向け情報)を専門とする会社です。類似の事業を行っている会社にアイ・アール・ジャパンがありますが、ここはどちらかというと「物言う株主やファンドに株を買い占められて無理な要求されたらどうしよう・・・」というような守りのIRが中心です。
同社の実績集を見ても、「空売り推奨のレポートを出されたので、防衛策をとって株価下落を防いだ」とか、「増配を要求するファンドの要求を封じ込めた」とか、結構きな臭いです(笑)
一方でウィルズはあくまでも平和的で、株主にとって魅力的な企業であると見てもらえるように、決算説明書や、説明会、セミナーなどのコンサルを行い、長期かつ安定的な株主を増やそう・・・という事業内容に見えます。
ちなみに、アイ・アール・ジャパンHLDGSの株価は2015年に合併で現在の銘柄コードになって以来約13倍にまで上昇しており、まさにテンバガー達成です。
同じくIRを専門とするウィルズにも、テンバガーの可能性は十分残されているかもしれません。現時点でのウィルズの時価総額は175億円で、まだまだ小型株。株価上昇の余地は大いにあります。
7063 エードット(設立2012年、上場2019年3月)
事業内容
エードットは、企業のブランディング支援が主な事業内容です。実績としては、ローソンの「おにぎり屋」シリーズのリブランディングが有名なところです。
同社は元々セールスプロモーション(SP)事業からスタートし、そこから事業領域を拡大。現在では、SP、PR(パブリックリレーション)、SNS対策など様々な形で、企業や商品、サービスのブランディング向上に取り組んでいます。
業績
2019年6月期の決算は売上高21.3億円(前年比47%増)、営業利益1.8億円(前年比52.4%増)となっています。こちらも直近期の決算では営業利益率が10%に少し届きませんが、今期(2020年6月期)の業績予想では営業利益率が10.5%と採算の改善が予測されています。
株価
エードットの株価は、IPO直後の下落→底ねりを経て、11月下旬に突如400円以上上昇したことをきっかけに、本格的な上昇軌道に入りましたが、まさにこれから!というところで2019年の取引が終わってしまったので、もうちょっと様子を見たいところです。
参考資料・サイト
総評
エードットはいわゆる広告業界に属する企業です。当然同業他社というか、競合になってくる企業は数多いですが、近年はローソンのように大手の案件を手掛けたこともあり、徐々にエードットと仕事をしたいという企業は増えているようです。
現時点での時価総額は89億円と、年末の急騰を経てもまだ時価総額100億円に達していません。PERもまだ50倍で、この手の新興株としてはまだまだ割高な部類には入りません。当面決算もないですし、今月の全体市況さえ悪化しなければ、この株価上昇の流れはまだ続くと考えられます。
おわりに
前編、後編と二回にわたって、昨年上場したばかりの若い企業の中から、今年以降特に期待できる銘柄4社を選びました。
昨年選定したファイバーゲート、チームスピリット、RPAホールディングスはいずれも微妙な結果に終わりましたが、今年こそはこの中から大きく飛躍する企業が現れてきてくれればと願ってやみません!
コメント